ISO39001 のリスクマネジメント

※ ISO39001のリスクマネジメントト規格は、ISO 31000(Risk management-リスクマネジメントの国際規格)の考え方が取り入れられています。

 

ISO39001の目的は、交通事故の撲滅ないし削減です。

 その目的の妨げとなるリスクを洗い出し、リスクマネジメントするプロセスは以下の通り定義されています。

  • 現在のパフォーマンスをレビューし、リスク及び機会を特定
  • 取り組むべき主要なRTSパフォーマンスファクターを選定
  • 長期にわたって何を達成することができるのか分析"
  • 適切なRTS目標・RTS詳細目標、及び行動計画を設定
                 - ISO39001 リスクマネジメントプロセス -
                 - ISO39001 リスクマネジメントプロセス -

 

 

 

リスクアセスメント
   リスクおよび機会の特定
  • RTSパフォーマンスのレビュー
  • リスクを発見し、認識し、記述する
  • 「機会」を特定する

 

◆ RTSパフォーマンスとは

 規格では、組織のマネジメントによってRTSに貢献した測定可能な結果、と定義されています。

 具体的事例としては、道路交通にかかわる死亡、重大な負傷、軽度の負傷、物損、ヒヤリハットなどが挙げられます。

 また、車両数、走行距離、あるいはビデオレコーダー設置数など、RTSパフォーマンスファクタやに挙げられたものが、RTSパフォーマンスにも該当する場合もあり、レビューの対象になります。

 

◆ 機会とは

  規格の解釈では定義されていませんが、特有の交通事故の発生要因と回避・提言する方法を「機会」として理解するのが妥当です。

 

 交通安全は、新しい問題ではないため、ISO39001では、過去の交通事故の発生要因と回避・提言する方法を整理し、選択すべき『RTSパフォーマンスファクター』(交通安全管理指標)を体系的に例示しています。 

 

 

◆ RTSパフォーマンスのレビュー とは

  組織における交通事故、ヒヤリハットは、事業、及び作業の過程で発生します。

その発生要因の多くは、作業ルール違反が考えられます。

そのため、RTSパフォーマンスのレビューにおいては、まずは業務のプロセス分析が必要となります。

ステップ 1.  
  • 業務のプロセス分析し、交通事故を誘発する可能性のあるエラー情報 (潜在する危険情報) を収集、分析する

ステップ 2.

 
  • 過去の交通事故報告書、及び、ヒヤリ・ハット情報を収集、分析する

 

ステップ 1. 工程FMEA分析

 業務のプロセス分析に伴うルール違反に伴う影響分析の手法として、工程FMEAがあります。

 工程FMEA(工程故障モード影響解析:Process FMEA)は、「作業及び管理のプロセス要素に着目して行うFMEA」です。

 工程FMEAにおける「故障モード」とは、工程設計で決めたことに違反することです。(エラー)

 故障モードの抽出の視点は、車両、装備のエラー(不具合)と合わせ、ヒューマンエラーを重要視する必要があります。

 

 具体的には、工程FMEAは、作業(操作)ごとに発生する可能性のあるエラーを洗い出し、エラーによって起きる事故等の影響とその原因を抽出して、その発生可能性と影響の大きさを評価し、対策の必要性の大きさ、までみていこうとする方法です。

 

FMEAの書き方
FMEAの書き方

事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方

国土交通省大臣官房 運輸安全監理官室 平成21年4月

 

ステップ2. 過去の交通事故報告書、及び、ヒヤリ・ハット情報を収集、分析する。

 事故やヒヤリ・ハットという形で表にあらわれた出来事だけでなく、日常の業務にひそむ、事故につながるおそれがある事象(潜在する危険)も明らかにしましょう。

 


具体的には

  1.  まず、過去におこった事故やヒヤリ・ハットの原因となった出来事を整理し、潜在する危険の典型的な事例をまとめます。
  2.  次に、潜在する危険の典型的な事例を、自分の業務に当てはめ、同じような事故が起こる可能性のある場所、業務、作業内容、時間帯などを検討します。

 

    ヒヤリハット報告書 例
    ヒヤリハット報告書 例

   リスク分析
  1. リスク評価基準策定
  2. RTSパフォーマンスのリスクレベル決定(数値化)
  3. RTSパフォーマンスファクターを選定

 

1. リスク評価基準の策定

 潜在するリスクを掘りおこしたら、その課題に対して対策を立てます。

しかし、掘りおこされたリスクは非常に数が多くなり、そのままでは何から手をつけてよいかわからなくなることがあります。

 そこで、対策を検討する対象となる潜在するリスクを、数値化、客観的に整理します。

そのための事前に、リスク基準を策定します。

 

(1) 状況の数値化

 評価基準は、次の2つの視点から行い、状況に応じ、それぞれ重みづけます。(数値化)

 

 ① そのリスクが発生する可能性の大きさ

 

 ② リスクが事故につながった場合の影響の大きさ

 


① リスクが発生する可能性の大きさとは

 

 あるリスクが、どの程度の頻度で発生するかという発生件数と、また、どのような時に発生するかという発生条件のどちらかの切り口で数値化します。

 特にこの2点にこだわることなく、組織の状況に応じて整理してください。

 また、数値の重みについても特に決めは有りませんので同様に、組織の状況に応じて整理してください。

 


② 事故につながったときの

  影響の大きさ

 

 影響の大きさを判断する要素は、色々あります。

  • 人身事故の程度
  • 物損事故の程度
  • 損害額の程度
  • 信用の影響度

    等


(2) リスク評価基準の策定

 

リスク評価基準は、両者の組み合わせにより、対策を取る優先順位とします。

 

 

各欄の中のAからDの記号は、対策を取る優先順位を表します。

 

 A:最優先で対策を取る。

 B:Aの次に対策を取る。

 C:費用対効果がよければ対策を取る。

 D:余裕があれば対策を検討する。余裕がなければ、今後の課題とする。

 

※ 単純に両者の数値を掛け、その数値範囲により基準分けする方法もあります。

 

 

2.  RTSパフォーマンスのリスクレベル決定(数値化)

 前項で、策定されたリスク評価基準に基づき、リスク事象それぞれを数値化していきます。

3.  RTSパフォーマンスファクターを選定

・特定されたリスクの特質を組織の実態に即し分析

・規格が挙げたリストから、対応するRTSパフォーマンスファクターの使用方法を選定する

箇条6.3 RTSパフォーマンスファクターを選定

 

    リスク評価
  • 定量化されたRTSパフォーマンスとリスク基準と比較
  • 対応の必要性の有無や優先順位を決定する
 
  リスク対応 
  1. RTSパフォーマンスファクターの決定
  2. RTSパフォーマンスファクター実践管理策 検討/評価
  3. リスク対応計画策定

選定したRTSパフォーマンスファクターに基づいて、RTS目標とRTS詳細目標を決定し、監視、測定するのに適した詳細さで「要素と基準」を特定する

  ・RTS目標・詳細目標を設定

  ・監視測定のための要素および基準を特定する