運輸安全マネジメント制度とは?

 運輸安全マネジメント制度は、平成17年度に起きた福知山線脱線事故等のヒューマンエラーによる事故の多発を受けて創設された制度で、平成18年10月より開始されています。

 

 

 

 企業等の品質管理の自己評価基準であるISO9000シリーズを参考としており、  

  1. 鉄道・自動車・海運・航空の運輸事業者が、経営トップから現場まで一丸となって、いわゆる「PDCAサイクル」の考え方を取り入れた形で安全管理体制を構築し、その継続的取組みを行う
  2.  事業者が構築した安全管理体制を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」を実施することにより、運輸事業者の安全風土の構築、安全意識の浸透を図るというものです。

 

 運輸安全マネジメント評価において国は、社長、副社長、取締役といった経営管理部門から、安全管理体制等について直接インタビューを行い、関係する書類を確認します。

  • 指導・処分といった性格ではない
  • 安全確保のための助言等を中心に事業者との対話を重視し
  • 「安全管理規程に係るガイドライン」に基づき評価し、
  • その取組みをより一層向上させるため、改善方策について助言等を行います。

 本制度は、いわゆるPDCAサイクルによる取組みの向上を図るもので、保安監査と車の両輪となって実施することにより、運輸のより一層の安全の確保が図られております。

 

 実際の評価では、「安全管理規程に係るガイドライン」に規定されている14項目に基づき、安全管理体制の構築、改善が適切に行われているのかについて確認が行われ、同時に、安全に対するより一層の取組みを促進するために不十分と考えられる取組みに対しては改善策等の助言が行われます。

 

 例えば、経営トップをはじめとする経営管理部門が、現場の情報、課題等、自社の安全管理体制を具体的に把握し、現場に対してフィードバックされる仕組みが構築されているかという観点から、いわゆるPDCA(計画、実行、チェック、見直し・改善)サイクルに基づく安全管理体制が適切に構築され、機能しているかどうかについて評価するものであり、鉄道、自動車、海運、航空の各交通モードに共通した手法により実施しております。

 この評価は、企業が生み出し提供する製品やサービスの生産過程、仕組み等の管理体制の規格であるISO9000シリーズを参考とした、従来の行政にはない手法です。 

 

運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン

~輸送の安全性の更なる向上に向けて~

平成22年3月

国土交通省大臣官房

運輸安全監理官

 

5.運輸事業者に期待される安全管理の取組・・・・・・・・・・・・・6

(1)経営トップの責務

(2)安全方針

(3)安全重点施策

(4)安全統括管理者の責務

(5)要員の責任・権限

(6)情報伝達及びコミュニケーションの確保

(7)事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用

(8)重大な事故等への対応

(9)関係法令等の遵守の確保

(10)安全管理体制の構築・改善に必要な教育・訓練等

(11)内部監査

(12)マネジメントレビューと継続的改善

(13)文書の作成及び管理

(14)記録の作成及び維持

 

対象: 鉄道・自動車・海運・航空の運輸事業者

      規模によって実施義務

 

運輸安全マネジメント制度とISO39001の相違点

 

 運輸安全マネジメント制度は、ISO9001をベースに策定された経緯もあり、トップのリーダーシップの下、PDCAサイクルを採用するという点で双方は類似していますが、ISO39001ではマネジメントシステムとして実効力を持たせるため管理項目が追加、整理されています。

 

出典 → (独)自動車事故対策機構 NASVA

 


 運輸安全マネジメント制度は、ISO9001をベースに策定された経緯もあり、トップのリーダーシップの下、PDCAサイクルを採用するという点で双方は類似していますが、ISO39001ではマネジメントシステムとして実効力を持たせるため管理項目が追加、整理されています。

 

 まず、組織の状況の把握という部分です。

  •  ISO39001では、「まず自社にとっての道路交通安全上の課題や問題点、荷主・顧客等から求められている事及び法律で求められていることを、マネジメントシステムを構築する前にいったん整理しましょう」ということが求められていて、これは運輸安全マネジメント制度や他のISOにはない特徴的な項目になっています。

 次に、トップマネジメントの責務というところです。

  • ISO39001では、経営トップはリーダーシップを発揮して、マネジメントシステムに主体的に関与し適切に運営することが強く求められています。

 

そして、計画段階におけるリスク管理というところです。

  • ISO39001では計画段階において経営レベルと現場レベルでのリスク低減策を考えて、目標・目的・重点施策を決定することが求められています。
  • 計画を立てる段階で考え得るあらゆる問題点を洗い出して、自社にとってどういうところが問題なのかということを確認して、自社にとって重要だと思うものについて目標・目的・重点施策を立てていく、という作りになります。"

次に、緊急事態への対応というところです。

  • ISO39001は、事故発生時などの緊急事態への対応とその準備をしっかりしておくこと、緊急事態を想定して定期的に訓練を行うことを求めています。これは運輸安全マネジメント制度でも要求されている部分です。

最後に事故・インシデント調査というところです。

  • ISO39001は運輸安全マネジメント制度同様ですが、事故・ヒヤリハット情報等の収集・活用、重大事故防止策の検討を行うことを求めています。"